変節と愛国 外交官・牛場信彦の生涯

牛場信彦を追った本。伝記的な流れに本人を知る人からのエピソード、歴史的背景がはさまり、とてもおもしろい。

日米交渉の人だと思っていて、戦前は枢軸派だったことなど知らなかったが、国を思って選択していった道であることは想像に難くない。

 

変節と愛国 外交官・牛場信彦の生涯 (文春新書)

刀狩り―武器を封印した民衆

秀吉の刀狩りは、信じられて来たように民衆を丸腰にしたのではない、という出だしはとても刺激的。ただ、進むに連れてメッセージがぼける。

日本には、身分を問わず、刀への信仰にも似た気持ちが長くあった。使う権利より帯刀という名誉権が主眼。さればこそ、大仏建立の鎹にする(仏様に差し上げる)と言わなければ刀狩りできなかった。戦後の占領軍が武器供出を命じた時に、日本刀を除外してくれと日本政府が頼み込んだのを見ると、この信仰がなくなったのはマッカーサー以降かと思われる。

アメリカは(カタナを獲物として持って帰りたい気持ちはともかく)日本の治安維持のために武器供出をさせることができ、自国ではできずじまい、なのか。それとも、日本では、今も相当数の武器が国民の手にあるがコンセンサスとして使われておらず、アメリカではそのコンセンサスが形成されなかった、なのか。筆者はアメリカには触れず、日本については後者を示唆する書き方をしている。

秀吉の刀狩りは、身分制度確立の手段。これを、大名間の戦争を仲裁するのと並行して進めた。秀吉のマネージメント能力の高さはどこから来たのかと思う。

刀狩り―武器を封印した民衆 (岩波新書 新赤版 (965))

The Impossible State: North Korea, Past and Future

朝鮮半島はいずれ統一できるという期待を持って書かれた本。

交渉、挑発、交渉のサイクルを経験し、北レジームは核開発を交渉ツールとして行っているのではないと明確に認識しつつも、やるべきことは交渉と述べている。少し前の本だが、(その時点で)アメリカ政府にも国民にも、中東に対するような関心の度合いは期待できないからこそ交渉と書いている。まさにそのとおりで、そして今に至った。

ラスクが基礎知識ないまま南北分断を行ったところが印象に残る。

The Impossible State: North Korea, Past and Future