流言のメディア史

フェイクニュースは最近の話ではなく、活字やラジオなどのメディアでも、むしろ昔は多かった。ファクトチェックができる現在の方が少ないというのは、違和感ない。どのようなメディアであっても、批判的に捉えて事実かどうか考えるメディアリタラシーが重要、という当たり前のことが繰り返し書かれる。

誤報があった場合の新聞社の対応も書いてあるが、筆者がいうように新聞メディアは人々の歴史観を作るものなのであれば、もっと厳しい対応が必要になる。実際には、新聞メディアによって人々の歴史観が左右されていないからこそ、あまり厳しくされていないのだろう。

流言のメディア史 (岩波新書)

英仏百年戦争

歴史題材の小説を書いている人が、英仏百年戦争といわれる出来事を見直した本。

著者の言いたいことは、「英仏が百年の戦争をしたのではなく、その百年が英仏の戦争に変えたのである」とか、「フランスという既存の国が『英仏百年戦争』に勝利したのではなく、『英仏百年戦争』がフランスという新たな国を誕生させたのである」という辺りに集約される。当時は国民国家でもなく、ナショナリズムも最初はなく、フランス人どうしがはじめた争いが、終わる頃には二つの国家になっていたという話。

2003年の本なので、EUへの期待で終わっている。今なら何というだろうか。EUとイギリスの関係も、後世からみれば百年抗争とでもいえるような時期に今が当たるのかも。

英仏百年戦争 (集英社新書)

ルポ トランプ王国

トランプ当選前の人々の気持ちを取材してまとめた本。分析は少しだけで、タイトルどおりインタビューをまとめたルポルタージュが中心。臨場感ある書き方で、気持ちがよく伝わる。

暮らしが楽にならない人々の不満の源泉は、グローバル化だけにまとめることはできないし、トランプがいう自由貿易と不法移民に対処したところで、極端な貧富の差がなくなるわけでもない。でも変えて欲しい、という気持ち。

トランプ旋風はトランプが出たから吹いたのではなく、トランプが風に乗った、という大方の見方に合致する。

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)