最初はオーストリア・ハンガリー帝国の背景から入る。The Sleepwalkersに似た世紀末ウィーンだが、小説に描かれた情景などから読み解いてくれるのがおもしろい。しばらくは数学をまったく意識しないで、歴史書を読んでいる気持ち。
ゲーデルの生涯についても、できるだけ誰にでもわかるように書いてくれた感じで、証明部分はあっさりしている。証明の内容よりも、時代背景や影響を受けた人、考え方の根幹に焦点を当てている。その範囲で言えば、いわゆる数学よりも、哲学や論理学の世界という印象。
ゲーデルが述べた左(科学を信ずる立場)と右(宗教を信ずる立場。本人は自分は右と整理)の考え方とか、数学者は強い集中力が必要なので1日2−3時間しか稼働しないとか、雑多に興味を惹かれる部分が多い本だった。
