梶山静六―死に顔に笑みをたたえて

梶山静六という政治家の生き方を丹念に辿った、時事通信記者による力作。この人を知る以上に、自民党の中の動きを知れる本。政治家の資質について、時代を見抜く目、と表現しているが、世間と永田町の雰囲気の乖離に気づけたのであれば、確かに資質があったのだろう。

政治家側の情報に基づくからか、政策プロセスに官僚が出てこない。官邸の役人が牛耳ると言われている今とは、随分違ったのだろうか。

梶山静六―死に顔に笑みをたたえて

波紋と螺旋とフィボナッチ


割と年の人のはずなのに、おもしろくて親近感がわく。あとがきを見ると、苦労してわかりやすい書き方にたどり着いたようだが、好奇心が旺盛な人だからかも。

魚やシマウマの縞模様の話なのに、チューリングの理論が出てくる。そういう違う切り口を素直に掘っていくとお宝がある、というのは、いい話だと思う。

波紋と螺旋とフィボナッチ (角川ソフィア文庫)

Postwar: A History of Europe Since 1945

よくある政治経済面だけでなく、社会・文化面も含めてヨーロッパの戦後をたどる本。著者がイギリス人なので、イギリスに関する視点が一番鋭いように思うが、わりと過不足なく南北東西含めたヨーロッパについて、オーソドックスな見方で一貫している。Brexit騒動の中で読んで良かった。

Postwar: A History of Europe Since 1945

沖縄問題、解決策はこれだ! これで沖縄は再生する。

橋下徹が沖縄振興の策を語る講演をまとめたもの。普天間の跡地にカジノとか、観光都市をめざし雰囲気ある街づくりとか、案じたいは普通だが、大阪を変えた経験から、どうやって実現するか、政治のやり方を指南するところがおもしろい。

おもしろいから支持され、支持されるから変えられる、と考えると、政治家には、「小難しく」とか「小馬鹿にして」ではなく、「おもしろく」やってもらうことが重要かも。

沖縄問題、解決策はこれだ! これで沖縄は再生する。

日ソ交渉の舞台裏―ある外交官の記録

1973年の田中角栄訪ソ、途切れていた平和条約交渉を再開することで合意するブレジネフとの共同宣言が出るが、これを大使としてモスクワから見た日々を日記風に綴ったもの。秘密の部分を書けない代わりなのか、比較したいからか、1956年共同宣言の回想が随所に混じる。

交渉の歴史にずっと関わった人なので、そういう意味でもおもしろいし、わりとソ連の田舎に出かけたりするシーンも多く、読み物として楽しめる。

日ソ交渉の舞台裏―ある外交官の記録 (NHKブックス)

芸術闘争論

現代アート(カタカナではなく、Artらしい)で、世界で売れるにはどうしたらよいか、丁寧に教えてくれる本。ただ、日本画専攻で、博士号も取ってる人なので、単に書いてある通りにしてもダメかもしれないけど。マンガとアニメへの愛が強い。

芸術闘争論 (幻冬舎文庫)

宿命 國松警察庁長官を狙撃した男・捜査完結

警察庁長官が狙撃されて奇跡的に生きていた事件について、捜査を担当した刑事が書いた本。東大卒のサイコパス気味な狙撃マニアが犯人で、証拠も多く掴んだのに、オウムだと信じた公安部に潰された、という話。

作家の作でないので読みにくいが、警察内部の話、容疑者を落とす手法がごく普通の人間関係だったりするところなど、おもしろい。映画みたいなところも多い。

 

宿命 國松警察庁長官を狙撃した男・捜査完結 (講談社文庫)

ドキュメント 北方領土問題の内幕 ──クレムリン・東京・ワシントン

日ソ共同宣言の交渉経緯。鳩山一郎の信頼を受けて交渉に当たった河野一郎の秘書を父に持つ記者が、父の日記も活用して書いたもの。

著者が書いているとおり、国内政治と外交交渉を全体として見る視点があり、よくわかる。国内政治とは切っても切れない話なので、良い手法。

国交がなく人物情報も不足しているソ連との交渉までを、完全に国内政治なお座敷密談のやり方で進めていくあたり、描かれる日本政府の情報砂漠感の背景の中で、リスクが高すぎる感が強い。

ドキュメント 北方領土問題の内幕 ──クレムリン・東京・ワシントン (筑摩選書)