安倍総理のスピーチライターを務めた著者が、スピーチを辿りながら安倍氏の歴史感を綴る本。本筋のテーマではないのかもしれないが、「伝わるコミュニケーション」の要点を伝えてくれているのが貴重。岸信介氏のエピソードもおもしろい。
キャラクターからつくる物語創作再入門
キャラクター(または周囲)の成長・退廃(「アーク」)を物語の中でどう構成するか、とてもわかりやすく書いてくれた本。主に小説とハリウッド映画の事例をあげているが、漫画を思い浮かべるとさらにわかりやすい。
印象に残った二点。まず、単なるシチュエーションの羅列を超えて、ストーリーにはなっているのに、どう読んでも気持ちが入らない物語は、キャラクターアークがないことが多かったかもと納得したこと。もう一つは、これまで読んだどの書き方本よりもわかりやすかったこと。訳本でこんなに読みやすい本は珍しい。
FXデータブック 平成の為替31年
端切れ時間にぱら見するのに最適。特定のポイントにフォーカスして過去を1年ずつ見ていくのは、意外とおもしろい。著者の好き嫌いらしき取捨選択が明らかなのも。誤字脱字の多さは、編集者・出版社の存在意義を逆に認識させる。
サイゴンから来た妻と娘
著者はベトナム戦争中のサイゴン陥落の時、現地にいてレポートを書いたことで有名な新聞記者。サイゴンの下町で結婚するまでや、妻と娘が東京に来ての日々を書きながら、時々、ベトナム文化・社会の考察と、それと対比しての日本社会への批判的というか哀しみの目線が混ざる。この部分は全然変わらないのが同じく哀しい。
とてもおもしろい本だが、特に娘との関係が時代を反映してなのか、今では存在し得ないような記述が出てきて驚く。
記者襲撃
赤報隊事件と言われても聞き覚えがないが、朝日新聞阪神支局襲撃事件の犯人を突き止めるため、朝日新聞の記者だった著者が在職中と定年後の取材をまとめた本。朝日を嫌っていた右翼系と統一教会系の両方について厚く取材するが、結論は出ない。
社会面というのは、確かに「社会」を切るコーナーのはずだが、実際には事件の断片や情緒的な記事ばかりなので、いつもこんなに多くを取材しているなら、そういう記事を書いたら良いのにという印象が残った。主張の内容で団体を見るだけでなく、実行力がある人物に着目することで、表面とは違うつながりが見える部分は興味深い。
本で床は抜けるのか
ブログを見て本を読んでみた。最後は侘しい個人的展開まで書いてくれる、サービス精神の旺盛な著者が蔵書の多い人々の暮らしを取材してくれた本。結局、何冊なら床が抜けるのか、木造はダメで鉄筋なら大丈夫なのか、確答はないが、雑駁に2000冊程度までは問題ないという印象を受けた。
ミザリー
長年ぶりの再読。作家の生態や考えを描く部分が過去よりも強く印象に残った。訳本は読みにくいが、やはり天才的におもしろい。
バイバイ、エンジェル
昔の訳本かと思うような文体で、19歳フランス人女子大生の視点で始まるが、難解言語を多数操るイケメン日本人男性(!)が同じ大学の学生として登場するので、訳本ではなく単に古いだけだとわかる。
最後まで関心を持って読めるものの、事件とおそらく描きたかった実社会の問題に結びつけるにはかなり難があり、納得感は薄い。一定の登場人物の中だけで完結させるやり方も古典的だが今読むには興味深い。
最強の「毒物」はどれだ? 気になる物質の頂上決戦・五番勝負
読み始めは、わざわざ対戦の実況形式にするとは子供だましなんだろうか、と思うが、毒や気体や爆薬など、対戦者を紹介する形で平易にポイントを教えてくれる。読み終わる頃には、しったか先生の解説を他の物質についても聞きたくなっている不思議な本。
創作の極意と掟
筒井康隆氏が何を教えてくれるのか、気軽に読み始めると、小説を書くことに向けている膨大な関心とエネルギーに気圧され、難しい仕事なんだなと思ってしまう。もしかしてそうやって無駄な参入を減らすのが思惑なのか。
