帳簿の世界史

世界史を別視点で見る(個人的)シリーズ。帳簿(会計)から切ってみた本。

カネが世界を動かした、と見るのは普通だが、帳簿の有無、良し悪しが世界を動かしたというスタンスで、確かにそうかもと思う。
会計士が読んだら、前半は誇らしい気持ちになり、最後はさくっと落とされる。

編集がつけた付録には、日本は中国から会計記録文化も輸入したと書かれている。
筆者は、会計の透明性が国(経済)の成長を決めるのに、今の製造と金融の大きな部分を占めるのが中国で、閉ざされた世界になってしまったことを書いている。
いつか、会計文化を逆輸入できる状態になることもあるのだろうか。

帳簿の世界史(文春文庫)

幽霊たち

久々にアメリカ小説を訳本で。
サリンジャーのナイフの上を歩くような感覚とは違う、でもとてもアメリカンな気分になる本。
苦悩や不安はガラスの向こうにあって眺めているような、軽やかな文章で、話よりそういうリズムを楽しむものかなと思う。

幽霊たち (新潮文庫)

美しき日本の残像

同じくAlex Kerrの本。もう少し時代が古いものだが、日本の自然と文化がもうおしまいだという危機感に満ちた文章。
自然についてはほぼ正しいし、文化についても確かにと思う部分が多いが、文化へのノスタルジーについては、文化はその時代の人間が作るものなので、愛されずなくなるものは仕方ないという気もする。愛されるものは残るので。

美しき日本の残像 (朝日文庫)

ニッポン景観論

日本の自然を愛するAlex Kerrの本。
よくいわれる電線だけでなく、コンクリート、ブルーシート、看板が自然や景観を損ねるという持論をわかりやすく写真を多用して書いている。
特にモンタージュ写真で、ヨーロッパの有名観光地を日本の観光地風にしたらどうなるか、日本の街並みからそういう物を取り去ったらどう見えるか、を並べたところは、爆笑しつつも寂しい気持ちになる。

<ヴィジュアル版> ニッポン景観論 (集英社新書)

獄窓記

獄窓記と続・獄窓記、続けて読んだ。
久しぶりにドキュメンタリー的なものでおもしろい本だった。
刑務所で見た累犯障害者の問題を描いて議論を起こしただけではなく、その後に問題意識をもつ人々と出会い、具体的な手当てをしていく過程が良い。盛っている部分もあるとは思うが、いいものも悪いものも、抱いた感情を書き出しているのは素直な人だという印象。

獄窓記 (新潮文庫)

反省記 ビル・ゲイツとともに成功をつかんだ僕が、ビジネスの“地獄”で学んだこと

アスキー西さんの半生記兼反省記。
家にあった日経ビジネスを読んでいた時、敗軍の将・兵を語るが一番好きだったが、簡単な記事よりも半生記の方が遥かにおもしろい。敗軍の将は皆さん書いて欲しい。
リーダー論的な部分もよく、特に有名経営者などの人々からかけられた言葉が珠玉。

反省記 ビル・ゲイツとともに成功をつかんだ僕が、ビジネスの“地獄”で学んだこと

潜行三千里

辻政信氏本人の作を復刻した本。
1945年からの中国や東南アジアの様子、国民党の内情が興味深い。
本人作なので、本人への評価とは直結しないが、敗戦理由として先に挙げているのが他人のせい、で、自省ではないのが物語っている感じはする。

潜行三千里 完全版

The Room Where It Happened: A White House Memoir

ボルトン補佐官の回顧録。
重要な外交課題ごと、時系列に起きたことを書いてくれていて、断片的に見聞きしたニュースがつながっていく感覚。
とても新しい暴露ネタが書いてあるというよりは、そういうギャップ埋めの本として役立つ。
本当にこんな感じで進んでいるんだろうなという意思決定過程も参考になる。

The Room Where It Happened: A White House Memoir