ハル回顧録

世界最大の本屋?をくまなく歩いて唯一買った本。
激動の時期に12年米国務長官を務めたハルが自分で書いたもの。枝葉がなく、とても簡潔でおもしろい。
意外と国々の性質や、その関係性で問題になるポイントは変わらない感じ。一方でスターリンをベタ褒めなのは不思議。

ボルトン回顧録との比較がおもしろい。
・ハルは表向き、ルーズベルトを褒めちぎっているが、読んでいると様々、すれ違いはあった風。直接的に言わないのが昔風なだけで、実はボルトンと同じことを言っている風。最後までお互い敬意を示していたので、関係性は全然違うが。
・ハル以外に国務長官を狙って活動した人が、ルーズベルトからの電報で失脚というか出鼻を挫かれるところがある。昔はTwitterがなかっただけで、ツイートで解雇される今とまったく構図は同じ。

ハル回顧録 (中公文庫プレミアム)

音楽の基礎

芥川也寸志著、古い岩波新書。一般向けの書、とある。
確かに譜面の読み方から入るが、後ろの方はたぶん、音楽やったことないと読むのは難しいと思う。
説明するのに次々、曲の一部を切ってきて見せてくれて、愛情に溢れた感がすごい。
ヨーロッパの優れた作曲家への愛も強いが、日本の伝統音楽への畏敬の念も強く感じる。
静寂と音の関係とか、音階に気に入らない部分がある訳とか、納得のいくところがいくつもあった。

音楽の基礎 (岩波新書)

「帝国」ロシアの地政学

ロシアが自分という国の辺縁をどう捉えているか、「主権」や「勢力圏」という概念の定義が違うところから始めて解説してくれる本。

本筋とは関係ないが、「ロシアにも一個の人格のように統一された国家的意思というものが存在するわけではない」と明言して、経済セクターと安保セクターが違うバランスで認識をもつ、ということをさらっとだがきちんと書いてある。

この解説を明確に書いている人は少なく(当たり前だと思ってかも知れないが)、大変すっきりした気持ちになった。

「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略 (東京堂出版)

無敗の男 中村喜四郎 全告白

汚職で服役した後も国会議員を続けている中村喜四郎氏の伝記。
選挙の鬼という感じで、とにかく選挙の話。人の心のつかみ方は確かにすごい。
ラストベルトと比べるのはどうかと思うが、そういう土地柄もあるのかもしれない。
書いた人も結局疑問は解けなかったと言っているが、それだけ選挙を勝って何をしたいのか、何を目指していたのかはまったくわからない。

無敗の男 中村喜四郎 全告白