成瀬は天下を取りに行く

これまでにない主人公、として絶賛されている本。それにしては性格の書き込みが薄いので最初は馴染みにくいが、周囲の様々な人々の視点から少し気になる主人公、成瀬を描きつつ、日常の何でもないできごとや感じ方を書いていく方式は興味深い。

量子コンピューターが本当にすごい

理系の人が、数学が苦手な人にもわかるように書く努力をした本。

少し前の本だからかもしれないが、タイトルとは違い「量子コンピューターがどうすごいか」よりも「どういう理屈でできているのか」を理解させようとする内容。

やはり理系ができる人には、数学苦手な人に伝えるのは難しい作業なのだと言うことがよくわかる。

パリへ行った妻と娘

サイゴンから来た・・の続編。前作に比べて社会考察的な部分は少なく、著者自身の内省的な部分が多い。心身の疲れから来る感じがあり、その後しばらくして亡くなったらしい著者の状況の表れかもしれない。

もともと私小説だが、ここまで書いていることを家族は知っているのだろうかと思うことがしばしば。登場人物のキャラクターについては脚色が入っていることを示唆する解説がついているが、それを傍においても、ここまでおもしろく書けるのは本当にすごい。

五分後の世界 I,II

勢いのある龍さん節で一気に読める話。と思ったら、IIは20日間で書いたらしい。かなり前の本だが、現代日本への赤裸々な揶揄の仕方が逆に新鮮味がある。

コロナを経てウイルスの話が読みやすくなった。そういえばかなり前に、ウイルス小説がはやった時期があった気がする。

「ロンリ」の授業:あの人の話はなぜ、わかりやすいんだろう?

論理的な会話をするための基礎を高校生くらいを念頭に書いた本。NHKで放送したものを本にしたらしい。

劇の台本作成を題材にしているが、おもしろいわけではなく、不思議の国のアリスを使った挿話がわかりにくさを増幅している。でも書いてあることは正しく、一瞬で読めるので、高校生よりもSNSで罵り合っている大人に読んでもらったら良いと思った。

クルト・ゲーデル 史上最もスキャンダラスな定理を証明した男

最初はオーストリア・ハンガリー帝国の背景から入る。The Sleepwalkersに似た世紀末ウィーンだが、小説に描かれた情景などから読み解いてくれるのがおもしろい。しばらくは数学をまったく意識しないで、歴史書を読んでいる気持ち。

ゲーデルの生涯についても、できるだけ誰にでもわかるように書いてくれた感じで、証明部分はあっさりしている。証明の内容よりも、時代背景や影響を受けた人、考え方の根幹に焦点を当てている。その範囲で言えば、いわゆる数学よりも、哲学や論理学の世界という印象。

ゲーデルが述べた左(科学を信ずる立場)と右(宗教を信ずる立場。本人は自分は右と整理)の考え方とか、数学者は強い集中力が必要なので1日2−3時間しか稼働しないとか、雑多に興味を惹かれる部分が多い本だった。

量子コンピューターが人工知能を加速する

少し前の本。ぱらぱらと読んだ。量子アニーリング方式の導入をできるだけ平易に書いてくれている本。理論的な話よりも、ビジネスへの応用を主に取り上げて、どういう意味があるのかわかるようにしている。何事も一番専門性の高い人が説明するに越したことはないが、知識量がばらばらの一般人むけに書くのは難しいんだろうなと思う。

図解 経済学の世界

経済学の流れがどうなっているかをざっと眺める本。著者の趣味で特定の人だけ、個人についてずいぶん書き込まれていたり、不思議なバランスではある。あまり内容に入らずにさわりだけ知りたい時には便利か。