クルト・ゲーデル 史上最もスキャンダラスな定理を証明した男

最初はオーストリア・ハンガリー帝国の背景から入る。The Sleepwalkersに似た世紀末ウィーンだが、小説に描かれた情景などから読み解いてくれるのがおもしろい。しばらくは数学をまったく意識しないで、歴史書を読んでいる気持ち。

ゲーデルの生涯についても、できるだけ誰にでもわかるように書いてくれた感じで、証明部分はあっさりしている。証明の内容よりも、時代背景や影響を受けた人、考え方の根幹に焦点を当てている。その範囲で言えば、いわゆる数学よりも、哲学や論理学の世界という印象。

ゲーデルが述べた左(科学を信ずる立場)と右(宗教を信ずる立場。本人は自分は右と整理)の考え方とか、数学者は強い集中力が必要なので1日2−3時間しか稼働しないとか、雑多に興味を惹かれる部分が多い本だった。

量子コンピューターが人工知能を加速する

少し前の本。ぱらぱらと読んだ。量子アニーリング方式の導入をできるだけ平易に書いてくれている本。理論的な話よりも、ビジネスへの応用を主に取り上げて、どういう意味があるのかわかるようにしている。何事も一番専門性の高い人が説明するに越したことはないが、知識量がばらばらの一般人むけに書くのは難しいんだろうなと思う。

図解 経済学の世界

経済学の流れがどうなっているかをざっと眺める本。著者の趣味で特定の人だけ、個人についてずいぶん書き込まれていたり、不思議なバランスではある。あまり内容に入らずにさわりだけ知りたい時には便利か。

機械学習入門 ボルツマン機械学習から深層学習まで

同じようなタイトルで、同じようにイラスト表紙の本は、たいがい開くと数式だったり前提知識が必要だったりして、閉じることになる。この本は違い、最後まで一度で読めた。

白雪姫ストーリーだからというよりは、本当にわからせるように書いているからと思われる。前提になる部分がさらっとふわっと書かれていて、結局わからないまま最後まで読んだが、その程度のものと考えればいいらしい。でも最後には原書のリストまで載っていて、本気の入門書らしい。

クレムリンの魔術師

現実の人々に想像で語らせて良いのかとか、最初気になったことはすっかり忘れるほど、おもしろい本。プーチンと、それを取り巻く60年代生まれでペレストロイカの頃に社会に出た人々を描きながら、ロシアのなりたちをロシア作家の言葉も挟み込んで見せてくれる。

キャラクターメーカー 6つの理論とワークショップで学ぶ「つくり方」

キャラクターづくりについて、大学?での講義内容を本にまとめたもの。ワークショップとあるとおり、実際にやってみる部分がおもしろく役立つ。マンガや映画を例にひいて解説してくれている流れは楽しいが、最後の方で突然、9・11からアフガン、イラク戦争という現実のできごとへの当てはめをするのは、唐突で浮いている感じ。

The Hundred-Year Marathon: China’s Secret Strategy to Replace America As the Global Superpower

2015年の本。なので新しい話があるわけではないが、たたみかけるように自分を含む専門家の間違いと、それによって生じた不利益を次々と上げるのは、インパクトがある。

専門家がなぜ中国の意図を読み違えたのか、真実を述べる情報源もいたのに、なぜ偽情報の方を信じたのか、淡々と振り返る。イラク戦争の時のCurveballもそうだが、間違いも赤裸々に振り返ることができ、それを叩き潰さない土壌があるのは強み。

韓国併合

日本からの視点ではなく、韓国からの視点で韓国併合を組み立て直すという取り組み。教科書的な日本からの視点よりも、なぜそうなったのか、がよりわかりやすい気がした。

日本は明治維新以降、外交文書を緻密に保存してきたが、韓国はそうではないとのことで、裏付けとなる情報量に差があることも強く感じられた。

堤清二 罪と業 最後の「告白」

西武を築いた堤康次郎を父とする堤清二が、父の「業」に縛られたという人生を亡くなる直前までのインタビューで語ったもの。インタビュー継続中に亡くなられたようで、若干コンプリート感がないが、戦前からの時代の雰囲気もうっすらと感じられ、断片的に興味深い話もある。